映画『search/サーチ』あらすじと感想・ネタバレ

https://www.amazon.co.jp/dp/B07MM3S6PX より引用

2018年公開のサスペンス・スリラー。スリラーと付いていますが、怖い/グロい要素はありませんので苦手な方はご安心を。
何とこの映画、全編パソコン画面の映像のみで話が進んでいきます。主人公でさえ直接映ることはなく、パソコンやスマホのカメラを通してのみ登場します。アメリカのサンダンス映画祭でも絶賛されたこの異色作品、必見の面白さでした。

主な登場人物

父👤デビッド・キム(ジョン・チョー)

娘👤マーゴット・キム(ミシェル・ラー)

母👤パメラ・ナム・キム(サラ・ソーン)

女性刑事👤ローズマリー・ヴィック(デブラ・メッシング)

父の弟👤ピーター・キム(ジョセフ・リー)

あらすじ(ネタバレなし)

主人公のデビッドは、16歳になる娘のマーゴットとぎくしゃくした関係ながらも二人暮らし。二人は母パメラを病気で亡くしていた。
ある夜、デビッドが寝ている間にマーゴットから何回も着信が入る。翌朝気付いたデビッドは電話をかけ直すが、マーゴットは電話に出ない。長年続けているピアノ教室の日だと気づいたデビッドは教室に電話をした。しかし、マーゴットが半年前に教室を辞めていたという事実を知らされる。マーゴットの友人の親からは、彼女は山へキャンプに行っているはずだと教えてもらうが、一緒にキャンプへ行ったはずの友達から、彼女が約束の時間になっても現れなかったこと、自分たちも彼女に電話が繋がらないということを聞かされる。

警察に捜索願いをだしたデビッドは、担当に任命されたと言う女性刑事ヴィックと会う。デビッドは、事前にヴィック刑事の経歴や活動、ウェブページなどをチェックして評判を確かめていた。自分と同じように一人息子がおり、警察として表彰実績もあり、社会奉仕活動も行っている彼女は、信頼できる人物のようだ。マーゴットの周辺の人物から集めた情報を元に家出だと判断したヴィック刑事に、「娘がそんなことするはずがない」と反発しながらも、娘のために捜査に協力していくデビッド。インスタグラムやタンブラーなど娘のSNSにログインして足取りを追う中で、娘が自分も知らなかった暗い一面を持っていたことを知る。そんな中、マーゴットの失踪に関係のありそうな人物が浮上してきて…

感想

全編パソコン画面の映像のみで構成されているという触れ込みがあり、前から気になっていたのですがついに観ました。いや、久しぶりにこんな面白いサスペンス映画に出会った。

冒頭で、デビッドとマーゴットがメッセージのやり取りをするシーン。デビッドが一度入力した文字を消して書き直して送信する描写がありますが、登場人物の顔を映さなくても、これだけでデビッドのためらいや不安などの感情を読み取ることができます。この手法は僕にとってすごく斬新で、冒頭からのめり込んで見入っていました。メインキャラクターがアジア顔なのも、意外と影響が大きかったかもしれません。一方的にすごく親近感がわきました。

話自体は、失踪した娘の行方を彼女のSNSの情報から探していくというシンプルなものです。たくさんの情報が画面上に出てきますが、画像や動画に加えて文字や数字が映っているので読み取りやすく、頭がこんがらがることなく話についていくことができました。
また、この映画のおもしろいところは、主人公デビッドの持っている情報は全て観客にも与えられているという点です。マーゴットのメッセージの履歴やSNSの投稿履歴、グーグルマップや FaceTime のビデオ通話の映像が次々と映り、映画の登場人物も観客もそれを見ながら真実を探っていきます。我々は登場人物と全く同じ目線に立って謎解きができるのです。数々の伏線が張り巡らされていますが、どれもこれもしっかりと目に映っていたものばかりなので、それらが繋がった時にはデビッドと同じくらい一喜一憂してしまいましたね。伏線を全て回収した上ですっきり収まる脚本と演出は、もう素晴らしいの一言に尽きます。本作の監督・脚本はアニーシュ・チャガンティという20代後半の若い監督。これがデビュー作というのでさらに驚きました。今後も要チェックの監督さんです!

SNSを使い慣れている人であれば難なく情報整理して謎解きに挑める半面、パソコンやスマホの扱いになれていない人がみるとなかなか苦痛に感じてしまうかもしれません。マーゴットのSNSにログインするためにパスワードの再設定をしたり、アップル社の「おやすみモード」が出てきたり、基本的なPC/スマホの操作、SNSの知識は前提で作られている映画です。まあでも今の世の中、スマホやパソコンで何かしらの自分のアカウントを作成・ログインしたことがない人なんてかなり珍しいでしょうから、そんなに気にするところではないですね。

あらすじ続き(ネタバレあり)

※以下ネタバレあります。

マーゴットがピアノ教室を辞めた後もデビッドから受け取っていた授業料、合計2500ドルを何者かの口座にネット送金していたり、偽装IDを作成していたということをヴィック刑事から聞かされ、驚きを隠せないデビッド。そんな中、ライブ配信サービスを提供するYouCastでマーゴットの過去の配信動画を見ていたデビッドは、フィッシュ&チップスという、マーゴットにしつこく絡むユーザーを発見。ヴィック刑事にこのユーザーの調査を頼むが、この人物は無関係だったと知らされる。

娘のSNSを見ていたデビッドは、彼女が最後に目撃された場所の近くにある湖が彼女のお気に入りの場所であり、失踪当日も湖に向かっていたのではないかと直感する。果たして、湖からはマーゴットの乗っていた車が見つかるのだった。しかし、血痕があるものの彼女は車内にはおらず、大規模な捜索が行われるも彼女は見つからなかった。

しかし、デビッドの実の弟ピーターの好きなアイスホッケーチームのジャージが車内に残っていることに気付いたデビッドは、弟を呼び出して問い詰める。ピーターは、時々マーゴットの相談に乗りながら一緒に麻薬を服用していたことを認める。その時、デビッドの電話が鳴り、犯人が見つかったと伝えられた。犯人はマーゴット殺害を自白した後自殺したようだった。娘の死を知らされ崩れ落ちるデビッド。

娘の追悼用に、あるサイトに思い出の動画や写真をアップしていたデビッドは、そのサイトに載っていた一人の女性の顔がYouCastのユーザー、フィッシュ&チップスのアイコンの顔写真と同一人物だと気づきその女性に連絡を取る。しかし、彼女はただのモデルで事件には無関係。ヴィック刑事が既に捜査をしているはずなのに、彼女は警察なんて来ていないと答える。違和感を拭い切れないデビッドは、ヴィック刑事に連絡を試みるが、娘の葬儀に向かっているのか繋がらない。電話に出た警察署の窓口係と話をしていると、ヴィック刑事は任命されたのではなく、自らが強く志願して事件の担当に就いていることが発覚。
実は、真犯人はヴィック刑事であり、マーゴットに好意を寄せる息子のロバートが、湖へ来た彼女ともみ合いになって谷へ突き落した事実を隠蔽しようとしていたのだった。マーゴットのID偽装や自殺した自称殺人犯もヴィック刑事のでっち上げだった。フィッシュ&チップスも息子のロバートで、ネットで見つけてきた女性の画像でアカウントを作り、マーゴットに接触していたのだった。ちなみにピアノ教室のお金は、母が病気で生活が苦しいと嘘をついていたフィッシュ&チップス(ロバート)のために送金していたのだった。マーゴットは麻薬こそ手を出していたものの、めちゃめちゃいい人だった。

ロバートが娘を谷へ突き落したことを聞いたデビッドは、ヴィック刑事が娘の遺体はまだ確認していないと言ったことで谷の捜索を要求。なんとマーゴットは、瀕死の状態ではあったもののまだ生きており、無事に救出されたのだった。最後は、回復したマーゴットが、パソコンの壁紙を父デビッドとのツーショットに設定して、パソコンをシャットダウンをしてエンディング。

感想(ネタバレ含む)

マーゴットが生還できたのは、死亡と断定された後もデビッドが娘の生存を信じて奮闘したからであり、全編を通してデビッドのマーゴットに対する愛情が強く表現されていました。母の死後二人がぎくしゃくしていたのも、母の思い出を共有したいマーゴットと、娘に辛い過去を思い出させたくないデビッドのすれ違いが原因でした。そのわだかまりが解けたシーンでは思わずジーンときてしまいました。パソコンの画面ってこんなに人の感情を表現できるんだって教えられましたね。映画の一つの新境地を見たような気がしました。
この作品はテクノロジックな手法を前面に押し出しながらも、親子愛や希望を捨てないことをテーマにしています。立場は逆ですが、ヴィック刑事も息子を守ろうとして必死に事件を隠蔽しようとしていましたしね。まあ完全に犯罪なので感情移入はできませんが。このヴィック刑事の愛と言うか過保護っぷりは作中何度も映し出されていて、そこに違和感を持つことができればデビッドより先に真犯人にたどり着けそうな構成でした。僕は全然そこまで読み切れていませんでしたが。

マーゴット死亡のニュースが流れたあとに、ストーリーは急展開を見せ、伏線がいくつも回収されていきます。実は、ヴィック刑事が犯人だという伏線や、ロバートが事件に関わっていること、マーゴットが無事救出されるというオチまで、冒頭の方の映像で暗示されています。しかもかなり分かりやすい方法で。デビッドがヴィック刑事の経歴を調べるシーンがありますが、ここで出てくる写真の一つに、自殺した自称殺人犯がヴィック刑事と一緒に写っていました。デビッドがこのことに気付いて写真を見比べるシーンが、個人的には一番ゾクゾクしましたね。興奮しました。ロバートがマーゴットのことを好きなのも最初の方で文字だけですが映されています。この伏線回収がたまらなく気持ちいい作品でした。観客も一緒に謎解きをする言わば「参加型」の映画の金字塔になりそうですね。

評価は95点(100点満点)です。超おススメです。

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