映画【ファニーゲーム】あらすじとネタバレ・感想

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映画史上屈指の胸くそ映画、鬼才ミヒャエル・ハネケ監督の『ファニーゲーム』を観たので、あらすじ(ネタバレ含む)と感想を書いていきます。あらすじはネタバレなしの部分とありの部分とに分けて書いているので、まだ観ていない方は注意して読んでください。

まー最後まで見るのがしんどかった映画です。意図して演出された胸くそ感とは言えかなり苦痛でした。作中の気味悪い雰囲気もラストも、観る人の心にとてつもない衝撃を与える作品です。ロンドンで発売禁止運動が起こるほど世間を震撼させたこのオーストリアの異色作品。怖いもの見たさに観て下さい。グロさはそんなにないです。

主な登場人物

ゲオルク:一家の父親
アンナ:一家の母親
ショルシ:一家の一人息子
ロルフィ―:一家が飼う大型犬
パウル:怪しい男の細い方
ペーター:怪しい男の太い方

あらすじ(ネタバレなし)

ゲオルク、アンナ、ショルシ、そして愛犬のロルフィ―は、バカンスを過ごすため湖のほとりの別荘にやってきた。到着してすぐ、ゲオルクとショルシはヨットを組み立て、アンナは台所で荷解きと食事の準備をしていた。別荘に到着してからなぜか吠え続ける愛犬ロルフィー。

そんな中、突然一人の男(太い方のペーター)が玄関にやってきて、アンナに「卵を分けてください」という。一度卵を渡したが彼はそれを玄関で落としてしまい、再度卵を要求する。しかも台所へずかずかと入り込んできた男は、水を張ったシンクにアンナの携帯電話を落としてしまう。イライラし始めたアンナはぶっきらぼうに卵を渡すが、彼が外へ出たところで、興奮している愛犬ロルフィーが飛びついてまた男は卵を落としてしまう。そこへもう一人、同じく手袋をはめた別の男(細い方のパウル)が現れ、ゲオルクの高級ゴルフクラブで試し打ちをしたいと言う。仕方なく許可したアンナだったが、その後また男たちが卵を要求しとてきた。ゲオルクとショルシは吠え続けるロルフィーを不審に思い、玄関へ様子を見に来た。そして横暴な態度を取り続ける男たちにゲオルクが平手打ちをしてしまう。するとパウルはゴルフクラブでゲオルクの足を殴って骨折させる。そしてパウルとペーターは彼らの家のリビングを占拠して一家皆殺しのゲーム開始を宣言する。

あらすじ(ネタバレあり)

※以下ネタバレあります。本作をまだ観ていない方は注意して下さい。

男2人は、愛犬ロルフィーをゴルフクラブで殴って殺していた。外に出て死体をアンナに探させたパウル。その時、同じくバカンス中の知り合い夫婦がヨットで近づいてきた。アンナは脅されて助けを求めることもできず、何も気づかずにそのまま挨拶だけして去って行く夫婦のヨット。

家族3人を家のリビングに監禁して一方的にゲームを開始したパウルとペーター。このゲームの目的は金ではないと言う2人。彼らの生い立ちが特別悪いということでもなく、ただ彼らは人を陥れるゲームを楽しんでいるだけであった。子供のショルシの顔にクッションカバーを被せて見えないようにした上でアンナの服を脱がせたが、体を一瞥しただけですぐ服を着るよう指図する。その時ショルシが恐怖でおもらしをしてしまい、服を着替えてくるように指示した2人。だがショルシは二階の窓から脱走し、隣の知り合い家族の別荘へ逃げ込む。しかし、その家族はすでにパウルとペーターに殺された後だった。あえなくパウルに捕まったショルシは、次に行われた「誰を撃とうかなゲーム」の途中で逃げようとしたため両親の目の前で射殺された。

その後、夜12時前に男2人は一家を残してどこかへ帰っていった。

息子の死に発狂しつつも、なんとか落ち着きを取り戻して脱走を図るゲオルクとアンナ。足を折られて思うように動けないゲオルクは、アンナを台所の窓から逃がして自分は水没した携帯電話をドライヤーで乾かして知り合いに電話を試みる。ついに電話は繋がったようだったが声が聞こえないため、向こうが聞こえていることを信じて「警察を呼んでくれ、助けてくれ」というメッセージを残す。

路上に出たアンナは、道の向こうからやってくる車からとっさに身を隠してしまう。続いて2台目が来たとき、彼女は道の真ん中に立って助けを求める。

ショルシの遺体に布を掛けていたゲオルクの元に、またパウルとペーターが帰ってきた。なんとアンナも捕まっていた。アンナが助けを求めた車には彼らが乗っていたのだ。一瞬のスキをついて銃を奪ったアンナがペーターを射殺。しかし、パウルはリモコンで本編の巻き戻しを始め、アンナが銃を奪う前まで話を戻してしまう。そして銃でゲオルクは射殺されてしまう。

翌朝、一家のヨットに乗ったパウルとペーター、アンナ。アンナは手足を縛られたままヨットから突き落とされて溺死。男2人は、昨日アンナに挨拶に来たヨットの夫婦の家にきて、また卵を要求するのだった。

感想

久々に観た「観なきゃよかった作品」。パンズラビリンス以来か…。

とは言え、内容が胸くそという触れ込みは以前からあったので意を決して観てみた次第です。予想以上にちゃんとしんどい作品でした。

ハネケ監督が、「暴力を見世物にしているハリウッド映画に対するアンチテーゼ」として意図的に理不尽な暴力を描いているので、良心的な観客はものすごい嫌悪感に包まれます。

だいたいの場合、映画は主人公側に有利なように話が進んでいきます(当たり前)。絶対絶命の場面で一筋の光が差して状況打破!とか可愛い子供やペットは死なない!とか悪いものは最後には亡びるのだ!とかとか。この作品では、そういった映画的常識が一切通用しないんです。全く何の罪もない幸せそうな一家が、必至の抵抗空しく狂った男2人組に殺されてバッドエンド、というだけのストーリーなんです。伏線も全部悪い方向に持って行かれて。ストーリーの最初の方に、ナイフをヨットの中に落とすシーンが意味ありげに映されます。どっかでヨットのシーンになってそのナイフで何とか戦うんだろうなあ、と予想していましたが、全然。最後ナイフで縄を切ろうとしたアンナは普通に制止されてそのまま湖ですよ。電話も結局繋がってないみたいだし、わざわざ2台目の車に助けを求めたのにパウルとペーターの車だし、一家だけでなくて観客の希望までここまでことごとく裏切る作品は他にないかも。

この作品の不気味さ、胸くそ悪さを一層強固なものにしているのは、出演陣の演技が素晴らしいからです。こんな理不尽な話でめちゃめちゃリアルな演技です。父ゲオルクの呼吸困難気味の絶叫も、どんどん悲痛感を増していくアンナも、終始観る側の神経を逆なでしてくるパウルとペーターも、終始吠えまくるロルフィーもみんなリアルです。アンナなんて、傷のせいもありますが後半やつれて顔が変わってましたからね。やつれた後のアンナの顔がたまに綾瀬はるかに見えたのは僕だけでしょうか。

でも確かに、人が軽々しくバタバタと殺されていく映画って国を問わず多いですよね。特にアクションではそれがある意味、映画の着色程度に使われていたりします。ビルに侵入するなら警備員が殺されがちですし、銃撃シーンで敵味方とも撃たれまくったり。作品によっては、「人の死」が「シーンの見栄え」とか「主人公の強さの表徴」のためだけに利用されてる感は否めないです。そのくせ味方の死は尺を取って感動的に演出してみたり。これに関しては僕もいい気はしてないですし、ゆゆしきことだとも思っています。この映画を観た後どうしてもやるせないので、ハネケ監督はこういう世相に警鐘を鳴らしたかったんだと自分に言い聞かせました。

監督の狙い通り、暴力の理不尽さと痛ましさが嫌と言うほど身に染みる映画です。ですが個人的にはやっぱり苦手な胸くそ映画です。人がバンバン死んでいくアクション映画を楽しんで観てる方は、この作品をみて暴力の恐ろしさと人の命の重さを再認識しましょう。

そういう意味も含めて個人的に総合評価は50点としておきます。

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