映画【戦場のピアニスト】あらすじとネタバレ・感想

戦場のピアニスト-作品-Yahoo!映画より

映画の基本情報

■公開年:2002年
■監督:ロマン・ポランスキー

■主演:エイドリアン・ブロディ
■制作国:フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス
■上映時間:149分

第二次世界大戦中のドイツ軍によるユダヤ人虐殺をテーマにした映画、『戦場のピアニスト』を観たので、あらすじ(ネタバレ含む)と感想を書いていきます。あらすじはネタバレなしの部分とありの部分とに分けて書いているので、まだ観ていない方は注意して読んでください。

自身もユダヤ人として強制収容されていた経験を持つウワディスワフ・シュピルマンの回顧録を、同じく強制収容の経験をもつロマン・ポランスキー監督が映画化したノンフィクション映画です。がっつり戦争映画なのでそれなりに残酷な描写があり、人間にはこれほどの残虐性が秘められているんだと衝撃を受けます。生々しい戦争映画が苦手で意識的に避けてきた作品ですが、目を背けたくなるような残酷な史実だからこそ目を背けてはいけないと思い知らされた映画です。

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主な登場人物

・ウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ):ユダヤ人の凄腕ピアニスト。
・ヤニナ:ポーランド人の女性
・ドロタ:シュピルマンの親友の妹。

あらすじ(ネタバレなし)

主人公ウワディスワフ・シュピルマンは、ポーランドのワルシャワで有名なピアニストだった。1939年9月、彼がラジオ局でピアノ演奏をしていたところ、突如ドイツ軍の爆撃に会う。避難している途中でシュピルマンは親友の妹ドロタと出会い、美しい彼女に魅力を感じていた。帰宅後、シュピルマンとその家族は、ラジオニュースでイギリスとフランスがナチスドイツに宣戦布告したことを聞き、第二次世界大戦の早期終結に期待を抱く。

しかし、ワルシャワはほどなくしてドイツの占領下になり、ドイツ兵による非情な弾圧が始まった。特にユダヤ人は、ユダヤ民族の象徴である「ダビデの星」を記した腕章の装着が義務付けられ、喫茶店への入店や公園のベンチに座ることなどが禁止されるなど、その異常な迫害はすぐに顕在化した。その制限された生活の中でも、シュピルマンはカフェでピアノを演奏したり、ドロタとデートをするなど、まだかろうじて救いの見出せる生活を送ることができていた。

1940年、そんな生活もワルシャワでのゲットー(ユダヤ人隔離地区)への強制移住によって終わりを迎える。ユダヤ人であるシュピルマンとその家族も家を捨てて指定された区画に住むこととなり、飢えをしのぐために家財を売って何とか生活をしていた。そこでの生活は、ドイツ軍によるさらに人外なユダヤ人虐殺を目の当たりにする日々であった。ドイツのために労働をしているという雇用証明書を持っていれば強制収容はされないという噂を聞き、シュピルマンは雇用証明のない父のためにつてを使ってそれを手に入れるなど、家族と共に生き延びるために手を尽くしていた。しかし、ユダヤ人大量虐殺の作戦は着々と進行していた。

あらすじ(ネタバレあり)

※以下ネタバレあります。本作をまだ観ていない方は注意して下さい。

1942年、シュピルマンと彼の家族は、他の大勢のユダヤ人と一緒に強制収容所へと連れて行かれることになった。移送のために家畜用列車に詰め込まれる段になって、シュピルマンだけは知り合いの警察に庇われて収容所行きを免れた。家族と引き裂かれ、他の男達と共にゲットー内での強制労働へ従事することになったシュピルマン。しかし、ピアニストである彼は肉体労働には向いておらず、仲間は彼を庇って倉庫内の仕事を与えてくれた。そんな中、彼はゲットーの外で労働に従事している時に知り合いのポーランド人女性ヤニナを偶然見つける。そして彼女にかくまってもらおうと脱出を決行、無事に彼女とその夫の家に隠れた。

反ナチス組織であるヤニナ達の助けを得て、身の安全のために数回移動をしながら最終的にはゲットーのすぐ近くの建物の一室に隠れ住むようになったシュピルマン。その間にワルシャワ・ゲットー蜂起が起こり、ユダヤ人はドイツ軍に武力抵抗を続けたが結局鎮圧されてしまう。シュピルマンは、同胞の命を懸けた戦いを部屋の窓から見ているのだった。部屋には週に数回食料を運び入れてもらっていたが、ある日ヤニナが捕まり夫も逃走。一人残ったシュピルマンも、ほどなくして隣人にユダヤ人であることがばれて逃走を余儀なくされる。ヤニナの夫から貰っていた緊急連絡先を頼ってたどり着いた家は、以前親交のあったドロタとその夫の家だった。

彼女たちの協力でまた隠れ家に住まわせてもらうことになったシュピルマン。今度の隠れ家は、ドイツ軍の病院と警察署の真向かいにあった。しかし、協力者が食料の運び込みを滞らせたことから内臓の病気にかかってしまう。一命をとりとめたシュピルマンだったが、その後、ワルシャワ蜂起の失敗をきっかけに、ワルシャワはドイツ軍によって壊滅させられる。戦車による砲撃や火炎放射器によるあぶり出しから命からがら逃げきったシュピルマンは、瓦解した街の中で比較的きれいに残っていた家に侵入して屋根裏部屋に身を潜めた。

ある晩、家の中でピクルスの缶詰を見つけたシュピルマンがフタを開けようと悪戦苦闘しているところ、その家に残されたピアノを弾きに来ていたドイツ陸軍将校のヴィルム・ホーゼンフェルトに見つかってしまう。彼に職業を問われて「ピアニストだった」と答えると、彼は家のピアノでシュピルマンに演奏をするよう促す。シュピルマンはショパンの『バラード第一番ト短調』を弾き、ホーゼンフェルトはその演奏に深く感動するのだった。

ソ連軍の侵攻が迫る中、ホーゼンフェルトはこっそりシュピルマンに食料と缶切りを差し入れ、自身の羽織っていたコートをもシュピルマンに手渡した。深く感謝するシュピルマンに、名前を問うホーゼンフェルト。名前を聞いて彼は、「必ずラジオでまた君の演奏を聴く」と言い去っていった。その後、ソ連軍によってドイツ軍は鎮圧され、ポーランドは解放された。瓦解した街からは生き残ったポーランド人が集まってきた。ドイツ軍将校のコートを着ていたシュピルマンはドイツ兵と間違われて一度狙撃されるが、何とか自分がポーランド人であることを理解してもらい、遂に彼の長い逃亡生活は幕を閉じた。

終戦後、シュピルマンは知人のヴァイオリニストと共に、自身を救ってくれたドイツ人将校の行方を探すが、結局足取りはつかめなかった。

字幕によって、ホーゼンフェルトが1952年にソ連の捕虜収容所で亡くなったことと、シュピルマンが2000年に88歳でこの世を去ったことが語られる。

感想

残酷な描写に陰鬱になりながらも、美しい映画だなと感じました。戦争やユダヤ人虐殺による絶望ではなく、必死に生きるシュピルマンの姿に、希望にも似た前向きな感情を覚える映画です。僕自身もドイツに滞在歴があり、またポーランドでアウシュビッツを訪れたこともあるので、当時の記憶を辿りながら鑑賞しました。映画を観た上でもう一度アウシュビッツなどの負の遺産を巡ると、さらに意義深いものがあると思います。アウシュビッツへ観光される方には、ぜひ事前にチェックしてほしい映画です。

この映画は、ナチスドイツのユダヤ人虐殺をテーマとしていることから、極悪非道の限りを尽くしてきたドイツ軍を糾弾する映画だと思われがちですが、実際は少し異なる印象を受けます。ポランスキー監督がこの原作を映画化しようと決意したきっかけでもあるのですが、原作者ウワディスワフ・シュピルマンは驚くほど客観的に自身の経験を回顧録として記しています。もちろん史実は史実なので、映画を観れば誰しも淡々と映し出されるドイツ軍の残虐性に恐怖と嫌悪感以上の感情を抱くとは思いますが、この映画の主たる目的はドイツ軍の残虐性を観客に刷り込むことではないように思えるのです。

虐殺の被害者であるユダヤ人が、当時の出来事を極めて客観的に描いているというのは、同じ時代背景やテーマを持つ他の映画にはない要素だと思います。本作では、ドイツ軍の中にもいい人がいて、ユダヤ人の中にも悪い人が描かれています。戦争によって敵味方に区分された善悪ではなく、普遍的な人間個人の善悪を描いているような印象さえ受けます。その徹底した手法のせいか、最後にロシア軍の捕虜となったドイツ軍が映るときでさえ、「ドイツ軍ざまあ見ろ」と感情移入することなく淡々と観ていました。まあドイツ軍のしてきたことはそんな手法で霞むようなものでは決してないですが。

本作のレビューを見ていると、驚くことに「シュピルマンは何もしていない。ただ人の世話になって生き延びただけだ。」とか「最後のシーンで、なんでドイツ軍将校のためにもっと尽力しなかったんだ」という批判めいたものが多少あります。他人のコメントを批判するのはナンセンスでしかないことは承知の上ですが、僕はこの映画がこのように解釈されることに少なからず憤りを感じます。地獄の虐殺をくぐりぬけて奇跡的な生還を遂げた人間に「もっと頑張れただろ」という言葉がどうして出てくるのか。この物語は事実を基にしており、実在したシュピルマンは、アクション映画俳優でも特殊訓練を受けた傭兵でもないただの普通の人間です。彼が生き延びたのは、家族全員と死別し、仲間を殺され、街を破壊され、それでも執拗に生きることを諦めなかったシュピルマン自身が手繰り寄せた奇跡だったと僕は解釈しています。この悲惨な状況の中で気が狂わなかっただけでも十分すごいと思うのですが…。

作中では、ドイツ兵から暴力を振るわれる時に無意識に手を庇うなど、あくまでピアニストであるシュピルマンがしっかり表現されています。最初観た時は女々しい男な雰囲気でしたが、ピアニストの命である手をずっと庇ってたんですね。そして作中で多くの人が彼を献身的に助けたことからも、彼がいかに皆に愛されるピアニストだったかが分かります。

終戦後も彼は精力的に演奏活動を行いました。ピアニストがゆえに命を救われたことに対する彼の使命感なのか、家族や同胞への献上の意なのか、はたまたあまりに辛い現実から逃れて少しでも安らぎを得ようとしたのか。いずれにしても、そういった彼の泥臭いまでの人間らしさがこの映画の美しさの根本なのかもしれません。

総合評価は95点(100点満点)です。全人類が一度は見ておくべき作品です。

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