序盤からハラハラさせられるシーンが多く、140分越えの長めの映画ですが最後まで飽きることなく見れました。謎解きどんでん返しのような構成ではないのでストーリーの意外性はないですが、『ペリカン文書』の名前の由来が分かった時は思わず唸ってしまいます。古風な感じは否めないですが、適度なスリルを十分に楽しめる映画です。
主な登場人物
ダービー・ショウ(ジュリア・ロバーツ):頭のいい美人法学生
グレイ・グランサム(デンゼル・ワシントン):ワシントンヘラルド新聞社の凄腕記者
トーマス・キャラハン:法学教授かつダービーの恋人
アメリカ大統領:犬好きの大統領
フレッチャー・コール:政界の裏ボス的な大統領補佐官
アリス:ダービーの超優しい友達
カーティス・モーガン:通称ガルシア、法律事務所の弁護士
カーメル:暗殺者
ギャヴィン・ヴァーヒーク:FBI法律顧問
デントン・ヴォイルズ:FBI長官
あらすじ(ネタバレなし)
ある夜、アメリカ・ワシントンD.C.にて、何者かによって2人の最高裁判事が暗殺される。その暗殺された判事と深い繋がりのある法学教授のトーマス・キャラハンは、その暗殺事件を聞いてショックを受けていた。
キャラハンの彼女であり生徒であるダービーは、その事件を知り、真犯人の仮説を立てて論文を書き上げる。しかし書き上げた後、荒唐無稽な自分の説を卑下してそれをキャラハンにレポートとして手渡した。
判事の葬儀のためにワシントンへ来たキャラハンは、旧友であるFBI法律顧問のヴァーヒークに再会し、事件の仮説の一つとしてダービーのレポートを彼に見せる。それを受け取ったヴァーヒークは上司のFBI長官ヴォイルズにそのレポートを見せた。
数日後の夜、キャラハンとダービーはレストランで食事をしていた。帰り際にキャラハンが車に乗り込んでエンジンをかけようとしたところ上手くエンジンがかからない。何度かキーを回していると突然彼の乗った車は爆発炎上。目の前で彼が死んだことで取り乱すダービー。彼女は、その直後に駆け付けた「ルーパート」と名乗る警官に軽く職質を受ける。その後精神病院に搬送されたダービーだが、実は「ルーパート」という警官は存在していないことが発覚。自身の身の危険を感じたダービーは病院を抜け出してホテルの一室へ隠れることにした。自分の書いた文書のせいでキャラハンが殺され自分にも危険が迫っていると理解したダービーだったが、その後何度も怪しい男に追いかけられたため、同級生のアリスの協力を得て本格的に身を隠すことにした。
一方その頃、敏腕記者のグランサムは「ガルシア」と名乗る男から電話を受けていた。その男は「あるとんでもない情報を入手したが、事が重大過ぎてその内容を話すことをためらっている」と言う。情報を聞くべく何度か接触を試みたが結局ガルシアからの連絡は途絶えてしまう。その後、ダービーからの電話が入り、グランサムは事件の渦中にある彼女の作成した文書の存在を知る。
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あらすじ(ネタバレあり)
※以下ネタバレあります。本作をまだ観ていない方は注意して下さい。
ダービーの文書はFBIと大統領補佐官を通して大統領にまで渡っており、不穏な動きを感じた大統領は、事件を穏便に収束させるべくFBI長官ヴォイルズに圧力をかけて捜査を打ち切るよう仕向ける。
一方、ダービーはヴァーヒークに連絡を取り、彼の保護を受けるべく接触を図ろうとしていた。翌日会う約束を交わした後、ヴァーヒークは滞在先のホテルで暗殺者カーメルに射殺される。ヴァーヒークになりすましたカーメルは、約束の場所でダービーと合流。ダービーを殺害しようと隙を狙っていると、逆に何者かに射殺されたカーメル。怯えたダービーはその場から逃走し、ニューヨークに身を隠してついにグランサムに会うこととなる。
ホテルの一室でグランサムに会ったダービーは、『ペリカン文書』と名前が付けられた自分のレポートの全容を彼に説明した。内容は以下のようなものである。
大統領に多額の支援金を渡している実業家のマティースは、石油発掘事業のために環境保全地区の開発をしており、それが元で自然保護派の弁護士団と裁判沙汰になっていた。環境保護派は、その地区でも特に絶滅が危ぶまれるペリカンに争点を絞って開発事業の中止を求めるも、地元ルイジアナの裁判ではマティースが勝訴してしまう。しかし、環境保護派は上訴するつもりで、マティース側はいずれ最高裁にまで訴訟が持ち込みになることを危惧していた。そこでそれを見越して自然保護派であった二人の最高裁判事をワシントンで殺害した。
ネタをまとめて新聞社に持ち帰ったグランサムだったが、事実無根だったため編集長からは取材を中止するように言われる。結局グランサムはダービーと組んで事件の真相に迫るべく調査を開始する。
まず二人はマティースの弁護を務めた弁護事務所を調査し、そこで以前グランサムに電話をかけてきた「ガルシア」が弁護士カーティス・モーガンだと突き止める。しかし、彼は既に殺害されていた。その後カーティス・モーガンの妻の元を訪れると、夫が謎の鍵を残していたと知らされる。それは貸金庫の鍵で、二人は妻の代わりに金庫の中身を確認することになった。
金庫を確認しに行き、中に入っていたビデオテープと書類を持ち出した2人。だが2人が金庫へ向かった後、地下駐車場に停めたグランサムの車には、暗殺者によってキャラハンの時と同じように爆弾が仕掛けられていた。そんなことは知らずに車に乗り込んだ2人だったが、ダービーがエンジンのかからない音に気付いて爆弾を見破り、車を捨てて走って逃走を図る。そこへさらに別の刺客が二人を狙撃してくる。何とか刺客を振り切った彼女らは、新聞社でビデオテープの確認をするのだった。
映像には「ガルシア」ことモーガンが映っており、妻に宛てて、「マティースの担当弁護士が残した殺害をほのめかすメモと、マーティスの証言を残す」と伝えていた。事件の裏付けが得られたため、グランサムはマティースの弁護事務所やホワイトハウスなどの事件関係者に次々と連絡を取って記事発表の準備を進めていく。大統領からの命令で事件捜査を打ち切りにしたことに負い目を感じているFBI長官のヴォイルズは、2人に協力する立場を取り、事件が落ち着くまでダービーが国外で過ごせるようにプライベートジェットの手配をするのだった。その後グランサムがTVでインタビューを受けているシーンでエンドカット。
感想
まずジュリア・ロバーツがほんまに綺麗。キャラハン爆死のシーンの泣き叫ぶ演技がものすごくリアルで一気に物語のシリアスな雰囲気に引き込まれます。
デンゼル・ワシントンは、20年以上前の作品にもかかわらずやはり風格があって観てて安心感があります。さんざん危険な目にあってきたダービーが彼に出会ったシーンを観た瞬間、ああもうこれでダービーは大丈夫だ、と思っちゃうみたいな根拠のない安心感です。彼の「the正義の人」役がドハマりな感じから来ているのでしょうか。言うまでもなく演技も素晴らしく、主役の2人はめちゃめちゃ光ってます。
アリス役の、『セックス・アンド・ザ・シティ』のミランダで有名なシンシア・ニクソンや、暗殺者カーメルを演じた『キングスマン』『プラダを着た悪魔』にも出演しているスタンリー・トゥッチなど、主役以外も実はかなり豪華な出演陣となっています。個人的には若い時のシンシア・ニクソンの容姿はドンピシャでタイプですね。本作中彼女はただただ素直で優しい友達として出てきます。彼女の健気な頑張りに要注目。そしてやはりスタンリー・トゥッチの怪しさ全開の怪演は見ものです。中盤で射殺されて比較的早い段階で出番は終わりですが、そこらのFBIより存在感がありましたね。正直もっと出番を見せてほしかった。
リーガルサスペンスということで結構込み入った法律関係の話が土台になっているのでストーリー自体は少し複雑に感じますし、登場人物(おっさん)がたくさん出てくるので整理するのに必死でした。
1993年公開の映画なので、どうしても音楽やカメラワークにはちょっと古さというか懐かしさを感じます。最近の作品に見慣れ過ぎていると、手の込んだ作りのストーリーや映像という印象は余り持てないかもしれません。そしてなんと黒幕のマティースは本作中には一度も登場しません爆。まぁこれはそういう制作意図なのか。
また、キャラハンの車にダービーがたまたま乗ってなかったり、「お姉ちゃん、また来てね」だったり、急に車内から犬がガブリ!だったり、ストーリ―展開にかなり運要素が含まれている感も否めません。ただ僕はそれでも一定の緊張感を保って最後まで楽しめました。
先にマイナス点を書いてしまいましたが、僕はこの映画大好きです。俳優陣はもちろん、ダービーとグランサムにどんどん迫ってくる暗殺者との手に汗握る攻防や、いい意味でエンタメ性の薄いストーリー展開も、無理なアクションがないところも、取って付けたような恋模様がなかったのもすごく評価したい点です。飾り気のないちゃっかり良作と言った感じです。アメリカ映画あるあるの「急に主人公がアクション」とか「主役の男女二人が結局くっつく」パターンは嫌いなので。
また、個人的な経験で言うと、法律要素の強いサスペンス映画は全体的にずしんと重くなりがちですが、若きジュリア・ロバーツが終始画面に映っているので、重さを感じずにすっきり見れるところも良かったです。
本作のラスト、事件後に、大統領補佐官は辞任、大統領は次期選挙が絶望的というニュースのみ流れて彼らの情報はそれっきりなので、彼らもきっちり天罰を食らう的な展開を期待した人には物足りないかもしれません。個人的には、ラストの物足りなさの裏にある妙なリアル感が見終わった後の余韻を引き立てていました。現実世界でもこんなもんだよね、意外と罰って受けてないよね、という風に、以前どこかで感じたような偉い人達の事件後のうやむや感を思い出して共感した次第であります。
そんな共感からか、この作品を見ると世の中にひしめいている陰謀論のことを考えてしまいます。この作中では、大統領の大きな支援者である実業家が環境破壊活動で訴訟になる→実業家は自分たちに不利な最高裁判所の判事を殺害→大統領&補佐官がそれを知って事件を隠蔽工作、という流れがあるわけです。偉い人同士でお互いの利害が密に絡み、結局強いものが弱いものを丸め込んでしまうという現存する社会構造ですね。正直なところ「ペリカン文書」くらいのスキャンダルは絵空事ではありませんし(さすがに最高裁判事を2人も暗殺はないか…)、事実は小説よりも奇なりなんて言いますから、政府や世界の要人に関わる陰謀論めいた話もあながちあり得るんじゃないかなと思ってしまいます。ひたむきに真相を追い求めたダービーとグランサムのような人が、我々の生きるこの現実世界でも真実のために奔走しているのでしょうか。そんな壮大な考え事までしてしまうような作品でした。
総合的に見て、とても好きな作品で、サスペンス好きならぜひ見てほしい作品です。評価は85点(100点満点)です。
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