ヴィーガンの思想~なぜ今、この生き方が選ばれているのか~

近年日本でも取り沙汰されることが多くなってきたヴィーガン(Vegan)。ベジタリアンとは違い、動物愛護の精神から一切の動物性食品を排除した食生活を営む人々のことです。

さて、ヴィーガンの考え方についてですが、日本ではまだ歴史が浅いためか、批判的な意見も良く見受けるところです。この記事では、ヴィ―ガンの理解をより深めるために、彼らの主張とそれを裏付ける学術的データを紹介したいと思います。

どのような人がヴィーガンになるの?

ヴィーガニズムの根底には「動物愛護」があります。特に大量生産のための「工場畜産」に対し、動物が劣悪な環境で人工的に産まれ、飼育され、屠殺され、加工されていく過程に疑問を抱き、動物も人間と同じように安らかで自然な生活を営むべきだと考えて行動しているのがヴィーガンです。

YouTubeでもたくさんの屠殺映像がアップされていますので、少々閲覧注意ですが、気になる方は見てみてください。想像以上に非情な扱いを受けている家畜の姿が映っています。もともと動物が好きな方で、畜産業のこういった情報を知ってヴィ―ガンになるという方は実際に多いようです。

ヴィーガンの目的はなに?

動物が可哀想だから、という理由で動物性食品を食べないのが大元の出発点ですが、それに加えて、絶対菜食主義の健康性や、ヴィーガンであることが地球環境への負担軽減に繋がることもヴィーガニズムの主な活動目的です。

ヴィーガンになると健康になる?

まず、「健康的な食生活に野菜は必須」というのは人類共通の認識だと思います。野菜は人間の健康にとって重要なものですし、健康意識の高い人々が菜食主義を採択することも多いです。

ヴィーガンについては、魚や乳製品もとらない「完全菜食」なので食生活に偏りがあるとは言われますが、多くのヴィーガンの方は、完全菜食主義が自身の体に良い影響を与えていると実感しています

特に不足しやすいとされる栄養素はビタミンB12というものですが、これは動物性の食べ物からのみ摂取されるとされています。今日ではビタミンB12を含んだカイワレが商品化されるなどしていますが、多くのヴィーガンの方は、サプリメントを飲むことで不足しがちな栄養素を摂取しています

ちょこっと情報

ヴィーガンレシピの本が日本語でも販売されています。食生活を改善したいと考えている方は、ヴィーガンにならなくても健康的な野菜中心の生活を目指してみてはいかがでしょうか。

ヴィーガンの活動が地球を救う?

さらに、肉の生産が減れば、地球環境にとって良い影響があるというのが定説です。というのも、世界中の家畜を飼育するのに必要な土地や水、さらに家畜用の飼料の生産には莫大な天然資源が消費されているのです。

例えば、畜産業のために地球上の可住面積の38%の土地が使われていたり[1]、世界中で1年間に消費される淡水の10%が家畜に使われたりしています[2]。そして、その大量の土地や資源を消費して、人間が口にする肉や乳製品、革製品などが生産されているのです。こうして数字で見てみると、人間が肉などの動物性食品を食べるためにかなりの資源が浪費されていることが分かります。

また、穀物が人間ではなく家畜に使用されることで、人間が消費する食料の生産効率の悪さも指摘されています。人間が家畜のために飼料を生産し、家畜がそれを食べて育って、後に肉になって人間に食べられるという流れを見ても遠回りな気は十分しますが、数字で見るともっと分かりやすいと思うので紹介します。

もちろん地域差や個体差はありますが、牛一頭から得られる可食部位としての肉がおよそ300kg程度なのに対し、その牛一頭が出荷までに食べる飼料はおよそ5tになると言われています[3]。もちろんウシの飼料は人間が食べるための穀物とは違いますが、5tの穀物があれば、と考えれば300kgのお肉の何倍もの人々を養えますよね。さらに、畜産業による温室効果ガスの排出量もかなり大きな数字となっています。実は畜産業に起因する二酸化炭素やメタンガスの発生は大量と言われており、ウシなどのげっぷにもこれらの温室効果ガスが含まれているそうです。そして、車や鉄道などによる運輸分野を差し置いて、地球上の温室効果ガス発生原因の14.5%を畜産が占めているというデータがあります[4]

まとめ

ざっと簡単にヴィ―ガンの考え方をご紹介しました。もちろんヴィ―ガンの中でも個人差はありますが、基本的には動物愛護の考えを土台に、地球環境や人間生活にとって悪影響かつ非効率な畜産業を減退させ、植物性の食べ物をとることで、健康的に生活しながら世界をより良くしていきたいというのがヴィーガンの考え方です。

様々なデータを提示しながら、ヴィーガンになることで期待できる良い影響を書きましたが、これに対する批判的な意見も存在します。別の記事で、その批判的な意見の検証も行っていますので、そちらもぜひ読んでみて下さい。

参考文献
[1] ”Our World in Data”, Hannah Ritchie, 2019, https://ourworldindata.org/global-land-for-agriculture
[2] “Water use of livestock production systems and supply chains”, FAO, 2018, http://www.fao.org/3/I9692EN/i9692en.pdf
[3] “10.草うしの生態について基本的な話”, http://kusaushi.com/story/10/03.html
[4] “TACKLING CLIMATE CHANGE THROUGH LIVESTOCK”, FAO, 2013, http://www.fao.org/3/a-i3437e.pdf

スポンサーリンク
生活
ゆ~いんぐをフォローする
お問い合わせ

お問い合わせ

ゆ〜いんぐ

コメント

タイトルとURLをコピーしました