ヴィーガンについて ~ドイツで見たその実態とは~

ベジタリアンとの違いは?
どんな食生活をしてるの?

ベジタリアンという言葉が普及して久しいですが、近年に至って「ヴィーガン」という食事のスタイルが広がりつつあることをご存知でしょうか。欧米に誕生したこの主義ですが、最近では日本での日常生活の中でも目や耳にすることが増えてきました。

この記事では、そんなヴィーガンのご紹介と、それに対する僕の個人的な見解を書いていきます。僕自身はヴィーガンではありませんので、ヴィーガンを間近に見てきた一人の意見として読んでください。

ヴィ―ガンってどんなもの?

ヴィーガニズムの考えに賛同し、それを日常的に実践している人々を「ヴィ―ガン」と呼びます。ヴィ―ガンという言葉は、「完全菜食主義者」と日本語訳されることが多いですが、「動物由来の食品は一切口にしない人々」のことです。

ベジタリアンとの決定的な違いは、根底に「動物愛護」の思想があることです。肉は勿論、動物から生産されるチーズやバターなどの乳製品、さらに魚やそれから作られる出汁、さらにさらにミツバチが生成する蜂蜜もNGだったりと、虫を含めた一切の動物から来る食品は口にしません。また、革製品や毛皮などの動物製品を買わない・使わないという点も特徴です。

動物が劣悪な環境で飼育され、屠殺され、出荷されて食べられるというような現代の生産・消費システムへの批判が大きな実践動機なので、個人の健康を目指すベジタリアンとは一線を画すものだということがよく分かると思います。

食生活にかなりの制限がかかるため、個人で水準を下げてヴィ―ガン生活をされている方もいらっしゃるようですが、基本的な考え方はこういった具合です。

ヴィーガニズムはなぜ生まれた?

ヴィーガニズムの根底には、「不殺生」や「非暴力」という平和的思想があります。広義での菜食主義のもともとの歴史を辿れば、紀元前にまで遡ると言われています。しかし、そうなると途方もない話になってしまうので、ここでは近代以降、ヴィーガンという言葉の誕生に関わる主な出来事を紹介しましょう。

1800年代中期、日本がまだ幕末の頃、あるイギリス人によって「ベジタリアン」という言葉が使用されたことが始まりだと言われています。当時のベジタリアンという言葉は、動物由来のものを避けて乳製品や卵も使用しないという意味を含んでいたようで、現在のベジタリアンよりもかなり厳しいものだったようです。

1847年にベジタリアン協会が設立され、1910年には、イギリスにおいて初めての完全菜食の料理本『No Animal Food』が出版されるなど、その活動はどんどん広がりを見せていきます。

しかし、後に協会の中でも乳製品や卵に対する意見の対立が起こり、動物愛護の観念に基づいて完全菜食派だったドナルド・ワトソンというベジタリアン協会の会員が、1944年にヴィーガン協会を創立しました。この年に初めて「ヴィ―ガン」という言葉が彼によって使用されたとされています。

また、その数年後には、ヴィーガニズムが「人間は動物を搾取することなく生きていくべきだ」とする主義だと定義されています。元来ヴィーガニズムは、健康のための菜食主義ではなく、「動物愛護」の観念が土台となった動物性食品や製品に反対する運動なのです。

その後、ヴィーガンは世界中に普及していき、ヴィーガン専門のお店が出来たり、ヴィーガン用のレストランができたりしています。2017年のアメリカでは、人口の6%がヴィーガンだという調査結果が出るまでになっていますし、日本でも近年ヴィーガン専門の食材店やレストランを目にするようになりました。ただ、日本ではヴィーガンが健康法やライフスタイルの一環としても見られており、動物保護の要素は欧米よりも薄い印象です。

ヴィーガンになるメリットは?

ヴィーガンになるメリット
・世界の消費システムや環境問題について明確なポジションを示せる
・必然的に健康的な食生活になる
・食費が抑えられる

僕自身がヴィ―ガンではないので、実践されている方から聞いた内容にはなりますが、大きく分けると上の3点が挙げられるでしょう。

まず、現在の世界で実際に起こっている家畜を巡る問題や環境破壊について、「自分は立場を明示して問題解決のための行動を起こしている」ということが胸を張って言えるということがあります。ダイエットがなかなか続かないのと同じように、個人的な健康意識だけではモチベーションの維持は難しいですが、動物や環境のためという大義があることでモチベーションは大きく飛躍するようです。

また、野菜ばかりの食事になるので、栄養価の偏りはあるようですが、それでも健康にいい食生活になることが大半のようです。肉中心の食生活と野菜中心の食生活を比べると、誰でも野菜の方が健康的だという意識は持っていると思います。実際に、腸内環境が整ったり、発がん率が低下したり、精神的に安定したりとプラスの効果は多くあるようです。さらに、野菜だけの食生活でも筋肉や体力は付くので、アスリートでヴィーガンという方も普通にいます。

さらに、全員ではないですが、食費が抑えられるというのもよく聞く話です。どうやら巷では、ヴィーガンはお金持ちがやること、メニューの選択肢が減るから財布に悪い、というイメージがあるみたいですが、そんなことはなく、むしろ安上がりというのが現状です。肉の代わりに豆腐や厚揚げを買うと考えれば想像できると思います。また、ヴィーガンになることでお菓子やファストフード、コンビニスイーツなどの間食が減ることも食費が少なくなる要因のようです。

ヴィーガンのデメリットは?

ヴィーガンになるデメリット
・栄養価の偏りが見られる
・人によっては対人関係に影響が出てくる

植物性の食べ物ばかりだと、どうしても栄養価の偏りは出てきます。特に問題視されているのがビタミンB12の不足です。これは植物からは摂取できないとされていますが、不足すると貧血や鬱を引き起こし、神経系に支障をきたすものです。そのため、ヴィーガンの間ではこのビタミンB12の摂取に対する注意喚起がよくなされています。また、基本的に絶対菜食の場合はこのB12が不足してくるので、サプリメントを飲んで摂取している方が多いです。

さらにもう一つデメリットを挙げると、ヴィーガンの人がそうでない人々と一緒に食事に行くと支障が出ることがあります。特に日本では、未だヴィーガンの思想が満足には浸透しておらず、外食先でメニューがなかったり家でもレシピの情報が少なかったりと食べ物に困ることはあります。自分がヴィ―ガンだったことで、友達との食事で気を使わせてしまうことが苦痛だったという方もいます。

また、日本の食品には動物由来の材料が使われているかいないのかが明確に判断できない時もありますので、肩身の狭い思いをする場面は多いような印象です。僕がヨーロッパに住んでいた時は、けっこうどのレストランでもヴィーガンないしベジタリアン向けのメニューは準備されていたので、日本でも近い将来外食の選択肢が大きく広がる可能性はあります。

僕がドイツで体験したヴィーガンとの生活

本記事では、どちらかと言うとヴィ―ガンのいいところをメインに書いてきました。僕はアンチヴィ―ガンではありませんし、彼らの問題意識の高さや実践力は本当にすごいと思っています。

僕も家畜の屠殺映像を見ると心が切り裂かれますし、犬猫の殺処分のニュースを聞くたびに暗い気持ちになります。屠殺や殺処分(日本は特に殺処分が多いです)の現状が改善されるために、国際的なヴィーガンの活動は一定の影響力があるとも思っています。

僕は以前ドイツに住んでいたことがあり、その時にヴィーガンの方々とも関わりがありました。ドイツはかなりのヴィーガン先進国で、人口における割合も世界的に見てかなり高い国となっています。それまで何も知らずに現地で初めてヴィーガンに出会ったので、動物のために自分の食生活を制限するという取り組みに衝撃を受けたことを覚えています。日本では出会ったことのない、地球環境に対する問題意識が桁違いに高い人々を見てカルチャーショックを受けました。

しかし、実体験としては、出会ったヴィーガンの方々と接する中で、少なからず暗い記憶があるのも事実です。これは全く個人的な経験であり一般論とはかけ離れていますが、動物由来の食品を口にする僕や他の人を完全否定するヴィーガンの方は多かったです。もちろんヴィーガンと一緒に食事をする時は他の人もヴィーガンのメニューのみですし、そうでなくても彼らの前では気を使ってしまい肉系は食べられません。同じコミュニティ内には、ヴィーガンから隠れてこっそり肉を食べている方もいました。また、ソーセージを焼いている僕を見てキレたヴィーガンの方もいました(実話)。その記憶がどうも僕の場合はなかなか拭えない現状です。

ヴィーガンの方がいる環境で、ヴィーガンのケーキや野菜のお寿司などを食べる機会も多少ありました。もちろんどれも植物性の食材のみでできており、お寿司のネタも全て野菜でした。味は正直普通に美味しいです。でもやっぱり味の変化が満足には楽しめなかった。それらを食べている時、食事の楽しみが減る代わりに、そこに一種の義務感が生じたような気持ちでした。ヴィーガンと接していて、彼らが動物を想う反面、目の前の人間をないがしろにしているような印象を受けたのです。

その経験からではないですが、僕はヴィーガンになるつもりはありません。理由はシンプルです。魚が食べたいから。お寿司を食べたいから。高知に生まれ育って魚を食べない人生というのは、一人カラオケで一曲も歌わないくらい物悲しいものです。日々熱心な活動に取り組むヴィーガンの人々から、そんな生活では現状を改善することはできないと言われれば否定はできません。それでも、僕は僕なりに地産地消を心がけたり、農業を学んだりして問題と向き合おうとしています。

ヴィーガンの活動は確かに今の消費社会で必要なものです。尊い命をもって生まれた動物を劣悪な環境で飼育し、屠殺して、加工して食している現実に、まだまだ改善の余地はあると思います。さらに、ファストフードや添加物の蔓延している現代社会において、健康的な食生活は重要な意味を持っています。みんながヴィーガンのレベルで、とは言いませんが、こういった問題に意識を向け、日々の生活の中で一つでも取り組みを見つけて行うことは大切だと思います。

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